A.I.を観ました。人工知能の描かれ方、未来の描き方は今の時間軸から伸びていったものにとても近いように感じ、とても面白かったです! ザブザブに泣いたので感想をまとめます。
A.I.とは
監督はジュラシックパークやE.T.の監督をつとめるスティーヴン・スピルバーグです。有名なので、映画に疎い私でも当然知っている監督です。
どの作品を取ってみても、この人には未来が見えてるんじゃなかろうか? と思ってしまいます。
A.I.は故スタンリー・キューブリックが長年温めてきた企画をスティーヴン・スピルバーグ監督が映画化したSFかつ人間の愛情について描いた映画です。
人工知能を搭載したロボットが当たり前に存在する社会、外見は人間と変わらないが、唯一欠けているものが「感情」だった。
ある時、不治の病にかかった少年の代わりとして夫婦に与えられた子供のロボット(デイビッド)に、親への絶対的な愛をプログラミングするという試みが行われ…。
この映画は2001年の作品です。今から16年前に公開されたものですが、人間とA.I.の差についてかなり明確に捉えられていると思いました。
人工知能と人間の違い
人工知能と人間の学習方法には大きな差はありません。あるのは、圧倒的な速度と膨大な量の差くらいでしょうか。
人間にできて人工知能にできないこと、それが出来事と感情を即座に結びつけることと、即座に感情を発することです。
映画の冒頭で教授が人工知能搭載のロボットの手を指すシーンがあります。
ロボットは「痛い!!」と反射的に動き、反応の仕方が人間と同じであることを証明します。
しかし、教授がそのあとロボットに対して「今何を思った? 怒りか?驚きか?」と質問すると「何のことですか? 今、手を刺されました。」と事実だけを述べるのです。
人間とロボットの差はまさしくこの点にあります。
逆にいうと、人間は自分の身に降りかかる全ての出来事に感情が付随します。その為に、理性的な判断ができず突発的な行動に出たりすることもあります。
ロボットはどんな出来事に対しても論理的な回答を計算し、実行します。だから優秀なのです。
発達障害にも見える人工知能
映画の中で、デイビットはロボットだからこそできないことや、ロボットだから事前にプログラムされていることが原因となり「危害を加える存在」として家族からはじき出されてしまします。
私はこれを見ていて、高機能広汎性発達障害やアスペルガー症候群のことを思い出しました。
高機能広汎性発達障害とは
広汎性発達障害のうち知的能力には問題がないが人間関係を築く上で問題が発生したり、社会に馴染めないという問題が発生する性質を持っている人のことをさします。200人の子どものうち1人はこの高機能広汎性発達障害であると言われています。
A.I.のデイビットも高機能広汎性発達障害の子も、プログラム通りに動いている素直な人間です。
ただ、大多数の人間の行動に自分の行動がマッチしないだけです。人工知能の学習方法と、発達障害の人が社会に馴染む為に行う学習内容は、ほとんど同じだと思います。
- 人の表情の種類を認識すること
- 個別の表情が指し示す感情を覚えること
- 特定の感情が発されている時の適切な対応方法を覚えること
これができれば、人間社会に馴染むことができます。実際、発達障害の診断を受けずに生活している人は独学で、診断を受けている人はボランティアスクールなどでこの学習を繰り返すことで社会に溶け込む努力をしています。
裏を返せば、人工知能を発達させる為には発達障害の人の学習方法の研究が必要不可欠だと思うのですが、どれくらい進んでいるものなのでしょうか。教えて偉い人。
スティーヴンスピルバーグも発達障害らしい
ちなみに、スティーヴンスピルバーグは自身のことを学習障害、失読症と告白しており、さらにアスペルガー症候群と診断されているとも言っています。
だからこそ、この人間社会とロボットとの絶妙なズレが描けたのではないでしょうか。
子から母への無条件の愛
この作品では、子供が親に抱く無条件かつ圧倒的な愛についても描かれています。しかし…最初は「親」と言っているにも関わらず、最終的には「母」だけになってしまっています。
「父」は?! 「父」はどこ行ったんだよ! この辺りはまだ2001年だなぁという感じがします。
残念ながら、夫婦2人の年収を合わせなければ生活が成り立たなくなってきている現代において、「男は外で金を稼ぎ女は家を守る」は実行不可能です。
今は「男は外で金を稼ぎ女は外で金を稼いだ上で家も守る」になってきていますね。
もちろん、どう考えても女のキャパ越えが目に見えていますのでこれからの時代では「男女共に外で金を稼ぎ家を守る」という、全ての物事を二人の管理体制で行う必要があります。
なので、「父親は子供から愛されなくても良い」なんていうのはありえないのです。イクメンだぁ? 当然だろうが!!!
時代によって当然、当たり前、普通は変化します。過去を参考にしても何も生まれませんので、先を見据えて行動したいものです。
ロボットを壊すコロシアム
作中に登場する、ポンコツロボットの公開破壊で盛り上がるシーンは、人間はいつの時代も、物質的に満たされれば満たされるほど逆に何か足りない気がして、そんな不安な気持ちを残酷なものを見て気を晴らしたくなる野蛮な生き物なのだなぁということを再認識しました。
LINE漫画や無料で読める漫画の中に、謎の空間に集められて殺し合いをするだとか、謎の理由で殺されるだとか、すごく多量に人が死ぬとか、そういうものがいつも一定数存在し、そして確かに自分にもそういうものを読んでしまう精神状態が存在していることが、その証明でもあるのだなと思いました。
野蛮な本能、消えない。
人間の性欲に対応するロボットまで
売れ筋商品らしいですよ、セッ◯スロボット。もしロボットが自然に使用される世の中になったら、人間の階層分け的に自然とそうなるのだろうなということは容易に想像できます。
愛は作り出せるのか
作中では、夢を追い求めることや命乞いをすることは人間独自の行動だと言われています。ただし、デイビッドは母を愛する強い気持ちから、その二つともをやってのけました。ロボットとして非常に期待できる存在だと言われたのです。
果たして愛は作り出せるものなのでしょうか。
これに関して、私は、作り出せると思います。愛が発生している状態とは、脳内から何らかのホルモンが分泌されていて、発汗、動機、目の潤いなど物理的に表現されていることも多いのです。
ということは、これらの状況を同時に作り出せれば「愛」している状態と同義になるのではないでしょうか。
ただし、愛は一方向では成り立ちません。そうした愛の発生条件を整えても、それを相手に表し、そして相手からも愛を表されることがなければ本当に「愛」のある状態とは言えないのです。(なんか、美女と野獣のお話みたい)
愛を作り出す研究、やってほしい。倫理とか人道的かとかどうでもいいから謎を解き明かしてほしい。
ただ、愛を作り出すことができて、その提供する愛を使って誰かの愛を得たとしても、それはプログラムに過ぎないのです。人間同士のような解明できない繋がりが生まれているわけではないのです。
A.I.感想まとめ
全体的に描かれている未来の姿が、今の現実から伸びた形として違和感がなく(私としては)ワクワクして見ることができました。久しぶりに見たけれど、面白かった!!
母への愛については、父へは?! という点が気になったことと、母の愛って強すぎてやべー…これ、将来的に出産後脳内ホルモンのバランス変化により私も抱くことになるの? やばくない? と思いました。
そういう冷めた目線を持ちつつも、長い間求め続けて、最後に「本当に手に入れたかったものとは異なる、擬似的な」ものであっても、とにかく母の愛を得たかったデイビッドと、一番幸せな1日には涙を流さざるを得ませんでした。
力一杯追い求めて、そして限られた1日でもいいと必死だったデイビッド…でも、それは刷り込まれたただのプログラムです。ただのプログラムなんです。
人間でいうところの盲信みたいなもので、幸せそうに見えるそのすぐ下には虚しさが埋まっています。
2,000年の時が経つと、きっと生き物はあんな感じの半透明でキラキラした物体のような者になってしまうと思います。これから先の見えそうで見えない未来を楽しみにしたいものです。
この体で長生きはあまりしたくないけれど、脳内のデータを取り出してクラウド内で保存されていたいなと思う、うたこでした。
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