こんにちは。うたこの夫です。
妻が新婚旅行の記事を書き始めましたね。では私も。
だいぶ間が空きましたが、ヨーロッパの鉄道旅行のお話です。
今回の焦点は国際夜行列車「nightjet」。ヨーロッパのブルートレインです。
国際夜行列車「nightjet」
ÖBB公式
nightjetって?
オーストリア鉄道(ÖBB)が運営する国際夜行列車で、2016年冬のダイヤ改正で誕生した、生まれたばかりの夜行列車です。
それでもヨーロッパでもっとも充実した路線網を誇ります。
なぜかって?
実は前身やさらにその前身があっての今の姿なんです。
背景
1990年代に入るまで、TEN(Trance Euro Nacht)、のちにEN(Euro Night)という名称でヨーロッパ各国で都市間を結ぶ夜行列車が多数運行されていました。
しかし、日本と同じように高速バスや航空網の整備によって利用客が減り、夜行列車は衰退していきます。
そこで、夜行列車復権のてこ入れとして、ドイツ・オーストリア・スイスの3か国出資による国際寝台列車(と鉄道会社)が誕生しました。その名はCNL(City Night Line)。1995年から運行を開始しました。
シティホテル並みのサービスを誇る個室寝台車、安価な座席車、その間を取る簡易寝台車、多様なニーズに合わせて編成が組まれていました。
最初は2路線での運行でしたが、順次路線を拡大していきます。
が、21世紀になると再び夜行列車が衰退していきます。今度のライバルはLCC。惜しまれつつも、CNLは2016年12月に全廃されることになりました。
(Euro Nightはまだ生き残っています)
nightjet誕生!
そこでCNLの後継に名乗りを挙げたのがオーストリア鉄道(ÖBB)。CNLの一部の路線を引き継ぎ、編成もほぼ変わらない内容で運行することになりました。
オーストリア鉄道(ÖBB)が夜行列車再編にかける意気込みは半端ではありません。
まず列車名が「nightjet」です。先に紹介した高速鉄道の愛称「railjet」や、近年配備を始めた通勤電車の愛称「cityjet」と同じ系統です色使いやフォントにも共通性を持たせています。新世代のオーストリア鉄道を象徴する3兄弟。
新しくデザインされた機関車も客車も、青地に赤灰線と「nightjet」のロゴが入ります。
ÖBBブログより
クラス
「nightjet」には、乗客のニーズに合わせて、さまざまなクラスが用意されています。
コンパートメント席
ÖBB公式より
昼行特急と同じ、3人掛けが向かい合う個室。6人掛けのコンパートメント席です。一番安く乗ることができます。
日本では簡易コンパートメント席の夜行列車はありましたが、一般的ではありませんでした。
クシェット(簡易寝台)
ÖBB公式より
2段×2の4人部屋、3段×2の4人部屋があります。横になって休むことができます。また、寝具のセットはセルフサービスですが、枕、毛布(nightjetのロゴつき)、シーツが用意されています。ミネラルウォーターと、簡単な朝食がついています。座席車の料金に20ユーロ程度の追加すれば、横になれちゃうんです。
日本でいうと開放A寝台に相当しますが、ウェルカムドリンクも朝食もないので、日本の列車のほうがサービスは数段劣ります。
普通寝台
2段または3段の個室寝台です。寝具は最初からセットされています。さらに、クシェット以上にたくさんのアメニティが付きます。
タオル、石鹸、スリッパ、ミネラルウォーター、耳栓、スナック、ジュース、そしてスパークリングワイン。
朝食は23品目の中から6品目選べるアラカルト。しかもホットドリンクのおかわり自由。そこらのホテルよりも充実しています。
日本でいうと、個室A寝台に相当しますが、アメニティや朝食がない分、数段サービスが劣ります。
デラックス寝台
普通寝台の部屋を少しだけ広くして、各個室にトイレとシャワーを付けたものです。
一部の列車にのみ連結されています。
rail.ccより
乗ってきた
私たちは、新婚旅行の最後の目的地、チューリッヒに向かうために乗車しました。
列車番号:EN40466 "nightjet"(愛称 "Wiener Walzer")
ウィーン中央駅(始発)~チューリッヒ中央駅(終着)
「nightjet」になっても、列車番号は「Euro Night」時代と同じ。
それにしても愛称 "Wiener Walzer" ってすごいな。
カタカナ表記だと「ヴィエナ・ヴァルツァ」だよ。
本来であれば21時27分発ですが、この日はなんだか遅れていました。
構内放送では「国際的な事情のため」と説明していました。
島国日本では起こりえない放送ですね。それにしてもいい加減な案内だ!
遅れること十分ほど。
EN40466が入線します。
推進回送で。
このうすらデカい2階建て車両を先頭に、さまざまな形の車両が連なるEN40466がテールランプを輝かせて近づいてきます。(バランス崩しそう)
この存在感マシマシな車両が私たちの乗るデラックス寝台車。
WLABmz 76-94 といいます。日本風に表記するとカロハネになるんでしょうか。
反対側は通路なので平屋。カシオペアみたいですね。
車体にでかでかと書かれた "Schlafwagen" はドイツ語で「寝台車」。そんなん書かれなくたって分かりますがな。
ところでさっきnightjetの新デザインの話をしましたが、この列車はなんか青くありませんね。
牽引機関車はRh 1116 "Taurus" でしたが、こいつも通常の赤塗装。nightjet塗装ではありませんでした。。
そう。実は新塗装はまだまだ少数派。ÖBBの通常塗装が圧倒的多数です。そんでもって例によって編成美とか気にしない国ですから、新旧塗装がぐっちゃぐちゃ。車両の向きも変わることもあります。今回は隣の車両と2階建ての面がそろっていますが、2両とも別方向を向いている日もあります。意味不明。
そのくせ、nightjet塗装の座席車で統一した編成で昼行特急を運行する。
もうわけわかんねぇ。
閑話休題
乗車口で改札があります。パスポートは必要ありませんでした。
「Europa is one country. No borders!!」
アテンダントさんのお話が印象的です。
私たちのデラックス寝台は、すべて2階にあります。
すぐにアテンダントさんが明日の朝食のメニューを聞きに来ます。チェックシートに印をつけて提出。
ベッドとは別にテーブルとイスもあるので、車窓を楽しみながらスパークリングワイン(とウィーンで別途購入したビール)を優雅に酌み交わします。
が、最初の停車駅、ウィーン・マイドリングを出てしばらくすると高速新線のトンネル区間に入ります。ものすごい振動と轟音。暇なので個室内探検。
(そうそう。客車列車なのに200km/h対応なんだよね。何キロで走ってたかは知らないけど。)
トイレはこんな感じです。きれいに保たれていますが、車両もちょっと古くなってきているので、ちょっとくたびれてる感じ。
洗面台の鏡の部分は扉になっていて、開けると棚があります。棚の中にコンセントがあるので、ここでスマホの充電ができます。
あと、浴室乾燥だか暖房の機能もあります。
便器の前に立って右を向くと、シャワーがあります。(狭くて全体を撮れません)
扉で区切られています。シャワーヘッドは取り外せませんが可動式です。
胸の高さのあたりにあるボタンを押すとお湯が出てきます。
それはすごい圧力。ちょっと痛いほどの水圧ですが、慣れれば気持ちいいものです。
列車は、ザンクト・ペルテン、アムステッテン、リンツ、ヴェルスと停車していきます。その次、ザルツブルグで2時間ほど停車します。その頃には日付が変わっているので私も寝ていました。
6時ごろ、フェルトキルヒの手前で起きました。まだオーストリアです。
いつの間にか牽引機がタウルスの重連になっていました。
フェルトキルヒを出ると、すぐに国境です。次の国は……
リヒテンシュタイン。
首都ファドゥーツも通過。すぐライン川を渡ってスイスへ。
リヒテンシュタインにいた時間、わずか30分以下。それもノンストップ。
スイス国境の駅ブフスで進行方向が変わります。機関車を付け替えた様子です。
すぐに朝食が出てきました。もぐもぐおいしくいただいていると……
線路がいっぱい集まってきて……
8時20分。チューリッヒにつきました。
ブフスからの機関車は、左側の小さい機関車、スイス鉄道(SBB)のRe420形だったんですね。
改めて乗ってきた列車を見てみると……
いたのかnightjet塗装。
あれ? 編成の端っこに乗ってたはずなのに、いつの間にか真ん中になってる!?
隣にはハンガリー鉄道の客車が。さらにその隣にはチェコ鉄道の客車もつながっていました。ザルツブルグの2時間停車の間に連結したのでしょう。
(ブダペストやプラハから来たのであれば、なぜウィーンで連結しなかったのでしょうか。)
ということで、快適に過ごすうちにウィーンからチューリッヒまで移動してしまいました。
最後に
ユーレイルパスに加えて寝台列車の料金がかかりました。具体的には2人で188ユーロです。時間がかかりましたし、お金もかかりました。
でも本来は寝てるだけの時間を移動にあてられるだけでも時間がお得な感じはしますし、何より見知らぬ国の景色を楽しみながらゆっくりできる、というのは大きな魅力です。
ヨーロッパだったら乗車時間の長さも魅力です。「nightjet」ではありませんが、モスクワ発ニース行きなんていう、ちょっと気が遠くなりそうなEuro Nightもあります。また、多様な国の客車がつながって、また違う国を走るというのも日本では見られません。
日本の定期夜行列車は絶滅危惧種です。私が幼いころには上野駅や東京駅に行けば「はくつる」「あけぼの」「北斗星」「あさかぜ」「富士」「はやぶさ」「銀河」など、数えきれないほどのブルートレインが走っていたものですが、今やブルートレインは絶滅。電車寝台の「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」がかろうじて生き残るのみ。人気のあった列車「北斗星」「カシオペア」すらも、車両老朽化と新幹線開業のために廃止になって久しいです。
寝台列車がこの先も生き残っていくのかはわかりませんが、「サンライズ出雲・瀬戸」も、「nightjet」も「Euro Night」も、一人でも多くの人に、寝台列車の良さを味わわせられる存在であってほしいと思います。