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「イントゥ・ザ・ウッズ」はじわじわと染み入って最高だった

こんにちは、ミュージカル大好きうたこです。ディズニーが映画化したブロードウェーミュージカル、「イントゥ・ザ・ウッズ」を観てきました。

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表面的に受け取るだけではあんまり意味が分からないところも多々ある作品でしたが、色々と調べていくとじわじわと染みてきました。内容についてうなうなと書き綴りますのでネタばれると思います。まだ観ていなくてこれから楽しみにしているという人は絶対に読まないでね!! そして個人の解釈なのでもしちょっと違っても許してね。

イントゥ・ザ・ウッズとは

まずは「イントゥ・ザ・ウッズ」とはなんぞやというところを公式サイトより。

映画『イントゥ・ザ・ウッズ』のベースとなった「イントゥ・ザ・ウッズ」は、誰もが知っているおとぎ話に新しい解釈を与え、それらを組み合わせて大人向けのミュージカルに創り上げた、斬新な2幕物の舞台だ。
作詞・作曲は、「ウエスト・サイド物語」の作詞を手掛けたスティーヴン・ソンドハイム、脚本はジェームズ・ラパイン。

初演は、1987年11月5日、ブロードウェイのマーティン・べック劇場。それから2年後の1989年9月3日まで764公演というロングランを記録した。作品は数々の栄誉に輝き、1988年、アメリカ演劇界で最も権威ある賞であるトニー賞を3部門受賞(オリジナルスコア賞、ミュージカル脚本賞、ミュージカル主演女優賞)。同年のドラマ・デスク・アワードでも、最優秀ミュージカル賞、最優秀作詞賞、最優秀脚本賞を含む5部門受賞を成し遂げる。その後も世界各地の舞台で上演され続けている。
日本での初演は2004年。宮本亜門の演出・振付にて上演された。

おとぎ話を人間の深層心理を描いたものとして捉え直し、大人向けのミュージカルに仕立てるという試みに挑戦した驚くべき物語「イントゥ・ザ・ウッズ」。ソンドハイムによれば、「wish(願望)がキー・キャラクター」であるという。それは登場人物同士を結びつけているだけでなく、登場人物と観客を結びつけているという指摘もなされている。

作品情報|イントゥ・ザ・ウッズ|映画|ディズニー

おとぎ話に出てくる人たちって、よく言えば「意志が強い」んだけどそれは「自分の欲望に忠実で頑固」とも言える。ディズニー映画なんかでは「夢」や「憧れ」として描かれているけれども奥底では人間らしいどろどろした「欲望」が渦巻いているんじゃないか! そして、それぞれの物語に出てくる人たちが、それぞれの「欲望」のままに行動したら世界はどうなっちゃうんだぜ? というのを描いたのがこの作品。

ざっくりとしたストーリー

誰もが知っている、シンデレラ・赤ずきん・ジャックと豆の木・ラプンツェルが登場します。皆がよく知る物語の彼らは、彼らの「Wish(願い)」を叶えるためにそれぞれに森に向かいます。(ラプンツェルは塔に閉じ込められているので既に森の中にいます。)これらのストーリーを繋ぐのがパン屋夫妻。彼らは呪いをかけられているせいで子どもができません。子どもがほしければ、青い月が出るその日までに「金の靴、赤いずきん、白い牛、黄色い髪」を集めてくるんだ!! と魔女に言われて森に向かいます。

では、おさらいです。それぞれの「Wish」とは?

  • シンデレラ→舞踏会に行きたい! 王子と結婚してこの生活から抜け出したい!
  • 赤ずきん→お腹いっぱい食べたい! だからおばあちゃんの為っていって沢山パンを貰った! 
  • 狼→赤ずきん食べたい! おばあちゃんも食べたい! 
  • ジャック→唯一の友だちである牛と一緒にいたい!
  • ジャックの母→乳の出ない牛なんてさっさと売って食費にしたい! 
  • ラプンツェル→塔から出て外の世界を見たい! 
  • パン屋夫妻→子どもがほしい! 
  • 魔女→美しさを取り戻したい! 娘(ラプンツェル)に愛されたい! 
  • 王子(兄)→自分から逃げるシンデレラを手に入れたい! 
  • 王子(弟)→塔に閉じ込められた美しいラプンツェルを手に入れたい!  

こいつら本当に欲望まみれだな・・・。これらすべての「Wish」が森の中に渦巻くわけです。みんながみんな願いを叶えていったら一体どうなっちゃうの?

そして、願いは叶う

そう、一旦みんなの願いはかなうのです。おとぎ話にはハッピーエンドがつきもの。正しい人は救われる、そういうことなのですね。みんなそれぞれの物語の中で「学んだ」こともあったみたいです。ですが、この願いを叶えた登場人物たちは「主人公」ではあったけれど「主人公」だからこそこうして願いを叶えたけど、それって本当に「めでたしめでたし」なの? 「主人公」はみんな正しかったの?

 

そうは問屋がおろさねぇ

 

みんなが願いを叶えたせいで、とんでもない事態が国を襲います。このままでは大変なことに!! 一体誰が悪いんだ? お前のせいだ! あんたのせいよ! あなたがあんなこと言ったから!! そうしてお互いに責任をなすりつける登場人物たち。おとぎ話のめでたしの後、雲行きが怪しくなってまいりました。「主人公」たちが集まってもうしっちゃかめっちゃか言っております。「主人公」だった時の輝きがなくなってしまったように思います。

「魔女」こそが正しい人? 

実は、この問題を解決するためにはとある人物を見殺しにすればよかったのです。魔女は、「主人公」たちが言い争っているのを聞いて「さっさとそいつ差し出せば? 」と提案します。ですが、「主人公」たちの答えは「NO!! 」と、人のせいにはするくせに倫理にはうるさいのです。魔女はうんざりして、「あなたたちは善でも悪でもないわ。ただのお人よしね。でも私は魔女だから、正しいことをするのよ。」と言います。たとえ人にそれは「悪だ! 」と叫ばれようとも問題解決の為に最善の選択をしようとする魔女。一体どっちが「いい」のかすら分からなくなってきます。そして、魔女は消えてしまう・・・。

冷静になる「主人公」たち

魔女が消えてしまったのを見て、自分たちの力でなんとかしてこの国を救わなくては・・・ということを思い出した「主人公」たち。作戦を練って、実行に移そうとします。でも、もちろんそこには迷いが・・・果たしてこの行動は「正しい」のか?

欲望のままに行動してきて招いてしまったこんな結果に、自分たちは更に行動をもって対処するしかない。でも、もしもっと悪くなってしまったら? そもそも、この行動が間違っていたとしたら? 戸惑い責任を押し付けあっていた彼らは、一気に不安にさいなまれることになります。しかし彼らは気付くのです。

独りではない。みんながいる。

もしあなたが何かを選択する時、決して独りではない。誰もが間違いを犯す、それは仕方のないこと。それに対してどうするか選ぶのはあなた。忘れてはいけないのは、あなたが選択したことを認めてくれる人もいれば、あなたの選択とは違う選択をした人も存在しているということ。それを忘れないで・・・。

子どもは物語から学んでいる

親が「言うことを聞きなさい! 」と叫んだりする前に、子どもは物語から様々なことを学んでいる。だから、言い付けを守らせるよりも物語を聞かせなさい。

これから、「主人公」ではなくなった「主人公」たちはどうなってしまうのだろうか? いろんな出来事が起こった森の中を出て、どのように暮らしていくのだろうか。物語は続いていく・・・。

意味、分かりましたか?

映画館で一度目だと、すっげぇポカーンってします。映像綺麗、歌も素敵、ちょこちょこ面白い、でもストーリーにおいてけぼりをくらうのです。あとからサントラを何度も何度も聞いていると、段々と意味が分かってきます。

私がこの物語からすくい取ったのは、物語は綺麗な面ばかりではない。間違ったこともたくさん起きる。でも、それでも続いて行くのだから選んで行動し続けなければならない。正しいか間違いか、分からなくても。何を選びとったとしても味方はきっといる。しかしながら、その選択には様々な視点からの判断や解釈があるということを忘れてはならないよ! というようなこと。

更に独自解釈を続けます

ここ5年くらいで、マイノリティの存在に焦点を当てた作品が流行りました。私が好きなミュージカルもののみで話を進めますが、スクールカースト最下位に所属するGlee部がコンプレックスやいじめを受けつつも色々頑張る海外ドラマ「Glee」、人と違う容姿と力を持ってしまったために「悪」にさせられた緑の魔女の物語「Wicked」、人と違うことで恐れられ自分を閉じ込めてきたが最後にはうまく力を活かすことで皆といられるようになった「アナと雪の女王」、このあたりの流れは「マイノリティ」の登場と「善と悪とは」表裏一体で見方によって変わってしまうのではないか? という問題提起と、「人というのは違っているからこそ良いのだ」という(みつをみたいだな)ストーリー展開がきていました。

私は、これまでの人類はマイノリティを排他することである種安定した種の保存を行っていたんだと思うんですが、これから先人類の繁栄を考えるのであれば多様であればあるほどいいと思っています。知恵袋で弱肉強食についての完璧な回答がなされていたことがありますが→コレ

弱者を抹殺する。不謹慎な質問ですが、疑問に思ったのでお答え頂ければ... - Yahoo!知恵袋

種類は多ければ多いほどいい。何が起こってどういうタイプであれば生き残れるかっていうことが現状全く分からないわけですから、可能性を広めるという意味で多様性というのはめちゃくちゃ大事なことだと思ってます。

そんな感じで、これまでに多様性にまつわる物語が色々と登場して、「イントゥ・ザ・ウッズ」では多様であり更に選択も様々、でもどっちが正しくてどっちが間違っているかなんてわからないんだよ。物事は表裏一体なんだよ。みたいな話になっているわけなんですよ。ぶっちゃけ広がりすぎてて終わってないんですこの話は! まぁ、物語は続く、だから合ってるっちゃ合ってる・・・。

多様性を認めるというのは簡単に聞こえますがめちゃくちゃ難しいしどこかで誰かが語り尽くしたとしても全然できてないのが現状です。なぜなら、人間というのは自分の意見の反対側にも意見を言っている人間がいることをいつでもあっさりさっぱり忘れてしまう生き物だからです。そこを、忘れちゃだめだよ~と言っているのがこのお話。

私はこう思う!!!!!! ばっかり言ってるから先に進まないんですよ。こういう考えもあればこういう考えもあるなぁって、そのどちらもに背景や主張があるっていうことを理解しなければいけないのです。Twitterで話題のクソリプなんかも、片側からだけ見て意見を言うからああなるわけですね。まぁ、見事に片側からしか見ないのもある意味すごいことだと思うので、参考にはなると思うんですが。かといって、常に両方の意見を聞いて両方を取り入れるなんてことをしていては中々制度化できなくて困ったりもするんですけどね。

この先、めっちゃくちゃいろんな種類の人間がいること、そしてその種類すべてに将来的に意味があるであろうことを普通に受け入れられるような広く柔らかいこころと頭が必要になってくるんじゃなかろーか? っていうか大人ならそれくらいの考え方がしたいよね。そして物語を通して子どもに伝えてあげたいよね! そういう話なんだと思いました。

また「主人公」たちが最後は集まってきてただの「登場人物」になってしまっていることには、人間はとある物語では「主人公」だけれど、そうでない時には「脇役」になったり色々な役割をこなしながら「全体」の物語を推し進めているんだよ、という意味合いも読み取ることができるようなできないような気がしますね。

・・・すっごい独自解釈でしょう、まいったか!

とはいえ面白いよ

以上です。お疲れ様でした。

「イントゥ・ザ・ウッズ」は解釈が自由な物語です。自分を誰に当てはめてもよし、どう深読みしてもよし、そして歌はすごく口ずさみたくなる感じ! 

歌がメインになるので映画館で観るのをおすすめします。レディースデーにもう一回観に行くぞー。

www.disney.co.jp