「突然カニバリズムにでも目覚めたの?」
君の膵臓を食べたい
青春っぽい絵面に似合わないタイトルで、一体どういう意味なのかと思いました。見終わった後、このタイトルに涙するーーとは、ちょっと安っぽいキャッチコピーであり、見終わった後このタイトルに涙することはなかったのですが、「そういうことか」と腹落ちし、私もそう言えるような相手が欲しいなと思いました。
なんか…良い映画だったなぁ…と思ったので感想レビューします。ネタバレはしません。
原作は「小説家になろう」投稿小説
原作は高校時代から執筆活動を続けているという住野よるさん。「小説家になろう」という小説投稿サイトに投稿された本作が話題になり、書籍化、映画か、漫画化までされている。
泣ける小説として若い女性を中心に口コミで人気が広がりました。
友達でもない、恋人でもない、明確な線引きはないけれど、ないからこそ心地の良い関係というのがありましたよね。それこそ、青春時代にのみ生まれる関係の一つだと思います。アラサーには二度と手に入れることのできない純粋な関係とも言えるでしょう。
真反対のタイプの人間が関わることで何が生まれるのか、それをとても綺麗に描いていました。
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住野 よる 双葉社 2017-04-27
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キャストが良い
膵臓に重い病を患っている山内桜良を演じたのは、浜辺美波さん。16歳の女の子ですが、大人びた顔立ちと透き通るような可愛らしさに、元気なのに死んでしまうのん…? という受け入れがたい現実がそのまま表現されているかのようです。
「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」の実写版ではめんまを演じていました。これもまたぴったりすぎてびっくりします。
【地味なクラスメイト】【秘密を知ってるクラスメイト】【仲良しくん】などと表現される男の子を演じたのは、北村匠海さん。映画内では終始地味な印象、内向的、ダサい服装などで、どこのクラスにもいる地味な男子を演じていますが
かっこつけるとこんな感じになるので腹立たしい限りです。北村匠海さんの存在は、たとえ鼻が大きくてもかっこよさは作れるということを証明してくれました。
「ゆとりですがなにか」で恋人を取り戻すために学校に乗り込んできた傍迷惑な青年を演じていたのも、北村匠海さんなのだそうです。分からないなこれ…。またしても七変化系の役者さんってことなのでしょうか。
物語は現在と高校時代を若干行き来しながら進むのですが、メインとなるのはもちろん高校時代です。この二人が、めちゃくちゃ良い。
「高い演技力で…」とか上から目線なことを語ることはできませんが、(だって私、役者じゃないし)見ていて物語に全く支障を与えないというのがすごかったです。
ミュージカルが大好きで、小さい頃から観劇していた私が恐縮ながら自分なりの意見を述べさせていただきますと、俳優さんっていうのは「入れ物」で、その箱の中に綺麗に役柄を詰め込んで物語を進行させる役割を担っているんだと思うのです。
実写版「美女と野獣」でベルを演じたエマ・ワトソンは、誰がどう見ても「美女」だったので物語の進行になんの支障もきたしませんでした。これが、「え〜、町一番の美女ってほどじゃないでしょw」とか「綺麗っていうか可愛い?」とか、疑問を抱くような人であった場合、物語はスムーズに進行しません。
この二人は、完璧な「入れ物」でした。役柄のキャラクターにぴったりあった外見、声、立ち振る舞い…おかげで、物語にしっかり集中することができました。
物語
ネットの投稿サイト出身とはいえ、きちんとした小説が原作になっていたためか、言葉選びが美しく感じられ、多くも少なくもなく、ちょうどいい感じでとてもよかったです。
小説や漫画と違って、映像では登場人物の心の声が入らず、表情その他でしっかりと表現されているところも物語をすんなりと受け入れられた理由の一つだと思います。
まとめ
映画館で隣に座った人がTHE チャラ男だったのでちょっといづらかったのですが、ハンカチ片手に号泣しました。きっとチャラ男は、「なんだこの気持ち悪いおばさん…」と思ったことでしょう。チャラ男の連れの女性は、めちゃくちゃ重要なシーンでお手洗いにたってしまっており、その後チャラ男がきちんとストーリーを説明してあげたのかどうかだけが気がかりです。
チャラ男は、予告編で流れていた「奥田民生に憧れるボーイと出会う男すべて狂わせるガール」に出てくる水原希子のような女性がタイプのようでした。
私も、この水原希子はなんか好きです。
「君の膵臓を食べたい」純粋に涙を流したい人におすすめです。こういうお話は、ぜひ外野のガヤが入らずに集中できる映画館で。