男女共に働いていなければとてもじゃないけれど子供を産んで育てることなんてできない世の中なので、女性が働きながら出産・育児を行う制度も徐々に整ってきています。
ですが、出産を機に退職する人はなんと全体の40%、出産前から無職の人と合わせるとおよそ6割の人が戻れる職場のない状態で出産に臨んでいるのだそうです。無事に職場復帰する人は38%ほどなのだそうです。
産育休を取得すれば、産休手当や育休手当でそれまでの給与の6割ほどの給付金を受け取ることができます。
0円と比べると、絶対もらっておいた方がいいはずなのにそれでも退職を選ぶ人が多いのはなぜなのでしょうか。
妊娠中の体調不良、育児との両立の不安、職場の無理解、育児に専念したい、などなど色々あると思いますが、そのうちの一つの理由について身をもって体感する出来事がありました。
それは、インフルエンザの流行です。
会社でインフルエンザが流行し、何人かの感染者が出ました。予防接種は受けていたにも関わらずです。
感染者と接触していた人も多いため、社内には保菌者もいる可能性がある状態。いくら手洗いうがい、マスク、消毒と徹底しても、いつ感染してしまうか分からない状態です。
普段であれば、「まぁ大丈夫だろ」もしくは「かかったらそんときはそんときだ」という感じでそのまま出社を続けるのですが、妊娠中にインフルエンザにかかることで起こる問題について調べてみたとき、私は「このリスクは回避した方がいい」と思いました。
インフルエンザに感染しても、胎児には直接の影響はありません。ただ、高熱が数日続くと胎児の環境も温度が高くなるため問題が起こることがあったり、免疫力や抵抗力の低下している妊婦には、インフルエンザが悪化して肺炎にかかる可能性もあるそうです。
もちろん、あくまでも可能性であり、それらの病気は会社だけではなくちょっとした外出でもらってくることもあるだろうし、夫が職場でもらってくることもあるかもしれません。
インフルエンザを心配して会社を休むなら、出産まで家に引きこもってなきゃいけないんじゃないの?!
という人もいるでしょう。
事故で感染することと、危険性の高い場所に敢えて出向いて感染することとでは、少し意味が違います。目に見えているリスクを回避するか否かは、私の判断に委ねられているのです。類似するリスク回避方法に「人混みは避ける」なんてものもありますね。
会社の人や周囲の目を気にして、リスクをわかっていたにも関わらず何の対策もなしに出社を続けてインフルエンザに感染したとしたら、私は確実に後悔するでしょう。
私が判断を間違えたせいで、悪い結果を招いてしまったと。
取り返しがつけばいいですが、もしそれで流産、障害、なんていう取り返しのつかないことになったら…? その時に、会社の人は責任を取ってはくれません。
私はたまたま、自分で人を説得できるレベルには論理的に会社に行かない理由を組み立てて我を通すだけの空気の読めなさがあり、そんな私を面倒くさいと思いつつも理解をしてくれる会社に勤めているので今回の問題を乗り越えることができました。
この不安というのは、社会との関わりが多ければ多いほど、自由に身動きが取れなければ取れないほど、強くなるでしょう。(もともと不安を抱きやすい人は環境に関わらず不安だとは思うけど)
「自分の判断ミスで最悪生死に関わることがある」
妊娠してからこのかた、基本的に「まぁ育つだろ」と思っている私が初めて対面した不安でした。もしかしたらこれが「実感」というやつなのかもしれない。
会社の人が、家族が、「それくらいのことで……」と不安を理解するそぶりを見せないでいれば、「そういうところとの関わりは絶っていった方が安全」と考えるのは当然のことなのではないでしょうか。
妊娠ってやつは本当に難しいですね。
「おいこら妊婦さまだぞそこどけそこどけぇ!」と傲慢になってもいけないし「すみません……妊娠なんかして本当にすみません……迷惑ですよね……」と萎縮しすぎるのもよくない。体調も人によって、時期によって全く違う。その人の不安の度合いも、仕事の内容も違うからその都度、その人によって考え続けることが大切。
でも、これって誰に対しても同じなのでは……? とも思います。人によって対応方法が変わるのは当然のことだし、状況をみて気遣ったりするのも当然のこと。
ただ、妊婦となると目に見えて「気を遣わねばならないのか?!」というプレッシャーと、対処方法の分からなさが周囲の人にも不安を与える原因になっているのかもしれません。
鬱の人が認められ始めた頃、どのように扱ったらいいのか分からなかったのと同じように。
対応を求める側も、周囲に対して分かりやすく論理的に何をして欲しいのかを伝え、話し合い、コミュニケーションを取る必要があるんだろうなと思いました。
そのぶつかり合いや、戦い無くして良くなる社会なんてきっとないんだろうな。
私はせっかくなので持ち前の空気読めなさを活用して、社内の人とバトルを続けようと思います。